IntSecに関するQ&A

IntSecに関するQ&A

Q:パラノイア【インターナルセキュリティ】ってなんですか? パラノイア【トラブルシューターズ】と、どう違うんですか?

A:どちらもアルファコンプレックスを舞台にしたパラノイアのRPGです。ただ、【トラブルシューターズ】では、下から2番目の赤(レッド)クリアランスのトラブルシューターをプレイするのに対して、【インターナルセキュリティ】では、下から6番目(上から4番目)の青(ブルー)クリアランスのトルーパーをプレイするんです。トルーパーには多くの特権があります。責任もですが。

Q :【トラブルシューターズ】がなくても、【インターナルセキュリティ】だけでゲームができますか?

A:もちろんです。必要なものは、図表も含めて全部掲載されています。

Q:どっちがいいですか?

A:一般論としていえば、【トラブルシューターズ】の方が、GMにとってもプレイヤーにとっても簡単です。パラノイアの世界を次第に理解していくという意味でも、アルファコンプレックスの最底辺のちょっと上に位置するトラブルシューターから始めるのが妥当でしょう。まったくのゼロから、はじめてパラノイアをプレイするなら【トラブルシューターズ】をお勧めします。

しかし、すでに第2版や(存在しない)第5版などになじんでいる方が、新たな展開について知りたいなら【インターナルセキュリティ】からはじめても問題はありません。2004年版(通称✕P版)をプレイされている方には、【インターナルセキュリティ】の方がお勧めかもしれません。2004年版にはない数多くの情報が掲載されています。

Q:【トラブルシューターズ】をプレイするには、【インターナルセキュリティ】は、必要ありませんね?

A:はい、【トラブルシューターズ】も独立したゲームですから、【インターナルセキュリティ】は必要ありません。

しかし、【インターナルセキュリティ】は、【トラブルシューターズ】のゲームをする場合にも有用です。赤(レッド)のトラブルシューターには明かされない情報も、【インターナルセキュリティ】にはたくさん掲載されています。つまり【トラブルシューターズ】のサプリメントとなります。青(ブルー)のトルーパーの装備、IntSecの内部組織、その他のアルファコンプレックスの諸々についての説明は、トラブルシューターミッションのアイデア源となるでしょう。

たとえば、ブリーフィング担当官を青(ブルー)のトルーパーにしても楽しいでしょう。ブリーフィング担当官は、ブリーフィングルームで命令を下すだけでなく、トラブルシューターチームに同行して、チームを監督します。彼または彼女は、(少なくともトラブルシューターより)はるかに良くアルファコンプレックスを理解しています。緑の暴官(グリーングーン)を顎で使い、強力な錐状(コーン)ライフルでコミーを始末します。ミッションの進行と完遂可能性は大幅に増大する… かもしれません。

もちろん、トラブルシューターが目の前の青(ブルー)トルーパーの命令をごまかすことは、コムユニットの向こうでふんぞり返っているブリーフィング担当官を騙すよりはるかに困難です。そして、トルーパーはトラブルシューターを使い捨て可能なバットスライムだと思っており、隊列の最後尾を定位置とするトルーパーの錐状(コーン)ライフルは、通常の場合、トラブルシューターに狙いがつけられています。このやり方は、初心者のトラブルシューターにパラノイア世界を理解させるのに有効でしょう。

そうそう、言い忘れていましたが、【インターナルセキュリティ】には、「市民にそのクリアランスでは許可されない情報を明かすこと」は反逆と明記されています。市民の模範である青(ブルー)のトルーパーは、おそらくこの規則に忠実です。

また【インターナルセキュリティ】に掲載されているシナリオには、トラブルシューターチームが登場するものがあります。このシナリオのPCとNPCを入れ換え、青(ブルー)のトルーパーではなく、赤(レッド)のトラブルシューターをプレイヤーが演じれば、それだけでトラブルシューターシナリオが完成します。

Q:でも、面倒くさくない? 【トラブルシューターズ】のあれやこれやを覚えるのも面倒だったのに…

A:面倒くさい? 新しい情報をいやがるRPGゲーマーなんていませんよ。そうでしょう? それでは、新情報の一部を紹介しましょう。

トルーパーが働くIntSecの部署がいっぱい。他のサービスグループからの出向者の部署もあります。トルーパーの捜査手段がいっぱい。科学捜査用(フォレンジック)清掃(スクラ)ボットは役に立つ仲間です。トランスチューブについての、ミッションのネタになりそうな詳細な説明もあります。

秘密結社も増加しています。新しい(昔の英語版にあったりしますが)秘密結社として、クローン・アレンジャー(クローンを融通してくれます。もちろん対価が必要です)、CLA(コンプレックスレーザー協会、アルファコンプレックスを守れるのはArmyでもIntSecでもなく自分達だと信じるバカな右翼)、世界国際労働組合(ウォブリー、潜入スパイだけで構成されるバカな左翼)、ランナーズ(アルファコンプレックスからの脱出を目指します)、ザ・ムーブメント(第二のアルファコンプレックスを建設し、第一のアルファコンプレックスを破壊します)、オールド・ガード(権力を失った元ハイプログラマーのプログラムグループ)、そしてクトゥルフの下僕(説明が必要ですか?)が加わりました。

【トラブルシューターズ】では詳しい記述が無かったアーマーについて知りたくありませんか? そうそう、トルーパー正装礼服についても知ることが出来ます。ドラッグも増えてます。なにより、その他の道具として「ありふれたランプ(オイルランプです)」が追加されました。もうこれで停電時に懐中電灯のバッテリーが切れても安心です。D&Dに負けていません。たいまつ? さあ? 次のサプリメントに期待しましょう。

Q:それでは【インターナルセキュリティ】のルールは【トラブルシューターズ】とどう違うのですか?

A:基本ルールはまったく同じといっていいでしょう。

専門分野のわずかな変更(「厳戒(Scum Radar)」が「偏執的集中(Focussed Paranoia)」に、「マルチコーダー運用(Multicorder Operations)」が「映像編集(Video Editing)」に変更)と、IntSec業務に役立ついくつかの追加(「告発(Accusation)」、「文書業務(Paperwork)」、「マッチョ(Macho)」、「暗号(Cryptography)」、「科学捜査(Forensics)」)があるのと、トルーパーの配属先がより細かく定められていることだけが違いです。トラブルシューターを作成した経験のあるプレイヤーなら、表を見るだけで簡単にトルーパーを作成できるでしょう。

そのほかの行動や戦闘の成否、アクセスとミュータントパワー、横車ポイントはまったく同じと考えて結構です。反逆ポイントの対象は追加されていますが、表を見れば分かる範囲で面倒な変更はありません。

あとは簡単です。

極端ないいかたをすれば、あなたがすでに【トラブルシューターズ】をご存じなら、いつでも簡単に【インターナルセキュリティ】をプレイできます。

次の言い換えを行ってください。

・レーザーピストル=錐状(コーン)ライフル

・赤(レッド)のトラブルシューター=青(ブルー)のトルーパー

・コンピューター=本部長

・ブリーフィング担当官(オフィサー)=任務担当官

・トラブルシューターチーム=セクターセキュリティチーム

・MBD =SOD

これでもう、【インターナルセキュリティ】です。誰にも文句をいわせてはいけません。GMにはその権力があります。パラノイアではGMにとって(あるいはプレイヤーにとって)面倒なルールは、全て省略できます。

Q:いくらなんでもそれはひどいんじゃありませんか? 大体それなら【インターナルセキュリティ】を買う必要ないし…

A:確かにそうですね。訂正します。簡単に【インターナルセキュリティ】をプレイする方法は、まずプレイヤー達に【インターナルセキュリティ】を購入するように命じ、セッションではあなたが買った【インターナルセキュリティ】を見せびらかし、【インターナルセキュリティ】を持っていないプレイヤーを厳しく叱責し、セッションへの参加を拒否します。それから、上記の言い換えをおこなってください。わかりましたね。

Q:それってたちの悪い詐欺では?

A:すばらしい。あなたはパラノイアの本質を理解しました。パラノイアはたちの悪い詐欺です。たちの悪い詐欺にはよくできたネタが必要です。【インターナルセキュリティ】を購入しましょう。

ああ、岩やら瓦礫やらを投げないでください。

真面目に説明しますから。

【インターナルセキュリティ】は、高いクリアランスでプレイする【トラブルシューターズ】と考えることが出来るでしょう。高いクリアランスは、PCの選択の幅を広げ、戦闘力を強化し、生存率を高め、アルファコンプレックスに対する重い責任を負わせます。

セッションでは、PCはIntSecの上級オフィサーであるトルーパーとしてチームを組み、多くの場合上司である任務担当官からミッション・ステートメントを与えられ、反逆の摘発、反逆者の逮捕や処刑、重要人物の護衛といったミッションを実施することになるでしょう。時にはセクターのIntSec本部長から直々に奇妙な命令が与えられるかもしれません。このあたりは、トラブルシューターと基本的に同じです。しかし、違う点もあります。

以下、トラブルシューターと比較しながら、【インターナルセキュリティ】のトルーパーについて解説していきます。

赤(レッド)のトラブルシューターと青(ブルー)のトルーパー

青(ブルー)のトルーパーのPCは、贅沢な暮らしをし、大抵の市民に対して偉そうにふるまえます。これは大きな違いですが、それだけではありません。【インターナルセキュリティ】にはしばしば「市民(Citizen)」に代えて「人民(People)」※という言葉が使用されます。人民には様々な意味がありますが、庶民、労働者階級、下層階級という意味と考えるといいでしょう。つまりトルーパーが支配し管理する市民達が人民です。そう、トルーパーはアルファコンプレックスの支配階級の一員なのです。

※Peopleの訳語は、「人民」ではなく「民衆」になる可能性があります。

赤(レッド)のトラブルシューターは下っ端です。いわれた仕事をちゃんとおこなえば褒められ、失敗すれば怒られ、基本的には割り当てられたミッションについてだけ責任を負います。青(ブルー)のトルーパーは違います。与えられたミッションを実行すると共に、セクターの人民を管理しなければなりません。逮捕と処刑の遂行割当(パフォーマンス・クォータ)を満たし、セクターの従順、幸福、服従、治安を示すセクター指数を維持する責任を負うのです。

コンピューター以外の命令者は、赤(レッド)のトラブルシューターチームの成功を期待していません。トラブルシューターにミッションを命じるのは、なにもしていないわけではないという言い訳で、トラブルシューターは失敗の責任を負うスケープゴートです。しかし、セクターセキュリティチームと呼ばれる青(ブルー)のトルーパーチームへの命令は、成功が期待される… 少なくとも成功したように見えるよくできた結果報告書が期待されます。【トラブルシューターズ】をプレイした方なら想像できると思いますが、ミッションの完遂は青(ブルー)のトルーパーにとってもやはり困難です。しかし、トルーパーは犯人ないし反逆者をでっち上げる… いや、見つけ出す多くの手段を持っています。この点ではトルーパーはトラブルシューターよりずっと有利です。

遂行割当(パフォーマンス・クォータ)

逮捕と処刑の遂行割当(パフォーマンス・クォータ)の充足は、GMのいじわるでセクターが無人だったりしない限り、たいした問題ではありません。適当な赤外(インフラレッド)のクズを逮捕するなり射殺すればいいだけです。ただし、割当の最大値も定められていることに注意してください。過剰な逮捕や処刑も処罰の対象となります。最大値が低く設定されている場合、ミッションの最初から熱心にやり過ぎると困ったことになります。

また、遂行割当の充足は通常チーム全体の責任ですが、個々のトルーパーに割当られることもあります。この場合、逮捕や処刑をめぐる抜け駆け合戦が始まる可能性があります。

セクター指数

さて、従順、幸福、忠誠、治安の四つのセクター指数は、少々面倒です。たとえば、たくさんの反逆者を逮捕すれば当然ですがセクターの治安指数は上昇します。大変結構です。しかしこのことは同時にセクターに数多くの反逆者がいることを示し、忠誠指数を低下させます。ビデオスターTeela-Oの反逆を摘発し処刑するミッションに成功すれば治安指数は向上するでしょう。しかし無知な人民は大きなショックを受け、たとえTeela-Oの次のクローンがビデオショーで笑顔を振りまいていても、幸福指数と忠誠指数は最低まで落ち込みます。安心しなさい。打つ手はあります。人民に幸福薬や超幸福薬を大量に配布すれば、文字通り幸福指数はアップし、忠誠指数も向上します。しかし、多くの人民がドラッグ漬けのヤク中になれば、人民の従順度は下がり、セクターの治安は悪化します。指数を一方が上がれば他方が下がるシーソーのようなものと、単純に考えてはいけません。それ以上です。反逆的行為や噂はたいていの指数を低下させ、大惨事の発生も多くの指数を低下させます。

しかし、セクター指数には二つの救いがあります。まず、四つの指数はそれぞれ一名のトルーパーに割り当てられ、トルーパーは自分の指数についてだけ責任を負います。他の指数がどうなろうと関係ありません。あー、何が起きるか、もうわかりますね?

もう一つは、細かい指数のチェックはGMにとっても面倒だということです。多くのGMは目立った指数低下要因があった時だけ(あるいはその指数担当のトルーパーが快調に飛ばしているときだけ)指数の低下を告げ、その改善を命じるでしょう。トルーパーはそのときになったら対策を考えればいいでしょう。

クローン予算

クローン予算は、ミッションごとにトルーパーチームに割り当てられる,不慮の死を遂げたトルーパーのためのクローン費用です。任務中に死亡したトルーパーは、クローン予算の範囲内で、無料で、クローンナンバーを増やさずに再登場できます。なんと素晴らしい!

さて、本音の話をしましょう。トラブルシューターにとってチームの同僚達は、表面上は味方ですが、実際にはしばしば排除すべき敵あるいは責任を押しつけるべきカモです。これはトルーパーも同じです。しかしトラブルシューターにとって内部の敵を始末する最善の手段である「不幸な事故」は、トルーパーにとっては最善の手段ではありません。クローン予算があるからです。ミッション中に英雄的な死を遂げたトルーパーや不幸な事故に遭遇したトルーパーはこの予算を使用できます。苦労して事故を偽装しても、標的はすぐさま同じクローンナンバーで復活し、チームのクローン予算が一人分減るだけです。つまり、チームメイトの排除にはクローン予算の対象外となる反逆的な死か、反逆的無能による死、あるいはミッションと無関係な死を演出する必要があります。

なお、トラブルシューターとの違いをもう一つ付け加えると、【トラブルシューターズ】では、過度に勇敢なPCや軽率なPCはチームメイトから便利な道具として好意的に見られますが、【インターナルセキュリティ】では、クローン予算の浪費者として憎まれることが多いでしょう。

ブリーフィング担当官(オフィサー)と任務担当官

青(ブルー)のトルーパーはめったにコンピューターに連絡しようとしません。なぜですって? もちろん、青(ブルー)の市民はほとんどの場合コンピューターが役に立たないことを知っているからです。通常の場合、トルーパーの連絡先は、セクターのIntSec本部の担当部門です。トラブルシューターがアルファコンプレックスの様々なサービスグループや部門にいったり連絡したりするのと同じ事と考えてください。場合によっては、ブリーフィング担当官(オフィサー)に相当する藍(インディゴ)の任務担当官に連絡するかもしれません。連絡が必要な場合や、役に立つ場合もあるかもしれませんが、怒鳴りつけられる場合も多いでしょう(ウルトラゴルフのコンペなどの重要な会議で留守でなければですが)。

青(ブルー)のトルーパーが、しばしば任務担当官に連絡し指示を仰ぐことは推奨されません。トルーパーは赤(レッド)のトラブルシューターではありません。コンピューターから深く信頼された模範的市民であり、様々な問題解決手段が与えられています。それにもかかわらず自分の判断で問題を解決できないとしたら、それは反逆か、あるいは同じ事ですが反逆的無能です。一回限りのトラブルシューターミッションのブリーフィング担当官(オフィサー)と異なり、任務担当官はトルーパーの直属上司です。その場しのぎの言い訳は、後で大きな問題を起こすでしょう。トルーパーの手の内や過去の失敗も知っている可能性が高いでしょう。自分で仕事を処理できない無能な部下に、上司がどう対応するかは想像できますね?

コンピューターと本部長

さて藍(インディゴ)の任務担当官の上には紫(バイオレット)のセクターIntSec本部長がいます。本部長は時として直接トルーパーに連絡してくるかもしれません。本部長室に呼び出すかもしれません。コンピューターが呼び出すのはたいてい処刑センターであるという違いを無視すればこのあたりはコンピューターと同じです。その内容がトルーパーのミッションを面倒なものにすることも、コンピューターからの連絡と同じです。賞賛の言葉であるかもしれませんが、その可能性が低いのもコンピューターと同じです。他方、トラブルシューター… 特に初心者のトラブルシューターはコンピューターの助言を求めて連絡しますが、通常の場合トルーパーが直接本部長に連絡することはありません。そんなことをすれば、直属上司である任務担当官はいい顔をしないでしょうし、本部長は任務担当官を通して上申しろというでしょう。IntSecは官僚組織です。これは、すべての市民に親切に対応するコンピューターと違うところです。コンピューターはいかなる時もトラブルシューターに対して正直で親切です。狂っているだけです。本部長は狂っている場合もそうでない場合もありますが、正直でも親切でもありません。

レーザーピストルと錐状(コーン)ライフル、そして書類

青(ブルー)のIntSecトルーパーは、レーザーピストルではなく、錐状(コーン)ライフルをぶっ放します。命中すればレーザーよりずっと強力ですが、レーザーピストルと同じぐらい外れるので注意が必要です。レーザースコープ、二段式錐状(コーン)弾、リコイルサプレッサー(反動抑圧器)、スマートガンといった様々なアップグレードが可能ですが、あまり効果を期待しない方がいいでしょう。アーマーはぺらぺらのリフレックではなくX-317Bフルコンバットアーマーです。強力ではありますが、これまた効果を過信するのは禁物です。

それから、【インターナルセキュリティ】には、武器やアーマーに加えて、「ミッション・ステートメント」、「処刑許可書」、「反逆告発及び処刑許可書申請書」、「錐状(コーン)ライフル弾薬申請書」などの素敵な書類がたくさんあります。最終的にはGMの考え方次第ですが、書類は時として錐状(コーン)ライフルより強力な武器となります。

トラブルシューターチームとセクターセキュリティチーム、MBDとSOD、そしてチームワーク増強器(エンハンサー)

赤(レッド)のトラブルシューターがトラブルシューターチームに編成されるのと同様に、青(ブルー)のトルーパーはセクターセキュリティチームに編成されます。違いは、「義務的ボーナス任務(MBD)」の代わりに「特別オフィサー任務(SOD)」があることです。

SODはMBDと似ていますが、セクター指数の割当と、チームワーク増強器(エンハンサー)によって、新たな不和の種がまかれています。

各トルーパーが責任を負うセクター指数は、割り当てられたSODによって決まります。チームワーク増強器(エンハンサー)は、各SODに割り当てられたトルーパーに与えられる任務(ないし特典)で、その内容はSODごとに異なります。

SODはトルーパー自身によって決定されます。まずリード・トルーパーを全員の投票で選びます。選ばれたリード・トルーパーは他のSODオフィサーを指名します。なんと、民主主義です。しかしながら、残念なことに選挙に腐敗はつきものです。

SODには次の6種類があります。

リード・トルーパー(指揮官)は、つまりチームリーダーです。任務の全体的成功に責任を負います。また、火力制御(ファイアコントロール)スイッチでトルーパーの武器の使用の可否をコントロールできます。トルーパーはチームリーダーの許可が無い限り武器を使用できません。トルーパーが錐状(コーン)ライフルの火力制御(ファイアコントロール)スイッチを無効にする技術を持っていなければですが。もしかすると、私物のレーザーピストルや剣や棍棒は有用かもしれません。加えてリード・トルーパーは、死亡者に対してクローン予算を使用するかを決定できます。これは極めて有力な特権ではありますが、乱用は禁物です。リード・トルーパーが死亡した場合、クローン予算の使用の可否は残ったトルーパーの多数決で決定されます。

コミュニティ・リエゾン・オフィサー(地域連絡担当官)は、ありとあらゆるチーム外との連絡や交渉を担当します。おろかな赤外(インフラレッド)のクズや、R&Dのマッドサイエンティストや、藍(インディゴ)や紫(バイオレット)の市民に協力を求めるだけではなく、IntSecの諸部局との交渉も任される事に注意してください。装備課や車輌課がとんでもない装備をトルーパー達に渡すとしたら、おそらくそれはコミュニティ・リエゾン・オフィサーが解決すべき問題です。

コミュニティ・リエゾン・オフィサーは従順指数に責任を負います。従順指数は人民の服従する意欲を示します。多くの場合、暴力と残忍さがこの指数を引き上げます。少々の礼儀正しさと好意がこの指数を引き上げる場合もありますが、市民を甘やかしてはいけません。市民に好き勝手をさせれば指数は低下します。反逆や噂も指数を低下させます。厳しくはあるが、公明正大な態度が望まれます… 望まれるだけです。

コミュニティ・リエゾン・オフィサーはチームワーク増強器(エンハンサー)として、指令(ダイレクティブズ)チップを管理します。トルーパーの誰かの頭蓋(スカル)スロットには、指令チップが挿入されています。誰に指令チップが挿入されているかを知っているのは(もしかすると誰にも挿入されていないかも知れませんが、それを知っているのも)、コミュニティ・リエゾン・オフィサーだけです。コミュニティ・リエゾン・オフィサーが指令チップを起動すると、チップを装着されたトルーパーの脳に秘密指令がダウンロードされます。その間、チップを装着されたトルーパーは何も出来ません。まあ、たいした特権ではありませんが、うまく使えば役に立つでしょう。

インタロゲーション&ソート・コントロール(I&TC)・オフィサー(尋問及び思考制御官)は、IntSec に情報を開示するよう人民を勧誘し奨励する責任者です。人民の熱意をかき立てるため、しばしば尋問ブースが使用されます。容疑者のプロパガンダ技能に充分注意してください。熱心なI&TCオフィサーは、得てして多くの秘密結社の高レベルのプロパガンダ技能を持つことになりますが、これは反逆です。また悪しき思考(バッドソート)及び反逆思想からチームを守る責任者でもあります。チームメイトに知覚フィルターの使用を命じることによって、危険な思考からトルーパーを遮断できます。知覚フィルターを使用中のトルーパーは何も見えず何も聞こえません。なかなか有用です。

I&TCオフィサーは幸福指数に責任を負います。この指数は人民の自然な喜びの全体的なレベルです。残念なことに幸福指数は通常の場合、トルーパーが熱心にミッションを遂行すればするほど低下します(たとえば、有能なI&TCオフィサーならそんなことはしないと思いますが、恐怖と脅迫で人民から情報を得たりした場合です)。幸福指数の低下が指摘されたら、幸福薬を配り、ジョークをいい、ダンスやゲームの会を組織しなわなければならないでしょう。つまり、I&TCオフィサーは拷問係からハピネス・オフィサー、しかもセクター全員のためのハピネス・オフィサーに変身しなければなりません。

I&TCオフィサーはチームワーク増強器(エンハンサー)として、メモマックス・レコーディング・チップを管理します。トルーパーの誰か(知っているのはI&TCオフィサーだけです)の頭蓋(スカル)スロットに挿入されたメモマックス・レコーディング・チップを、いつでも起動できます。チップが起動すると、チップを装着されたトルーパーの脳に別の人格が一時的にダウンロードされます。その人格はミッションに役立ち(その筈です)、仕事が終わればもとの人格に戻すことができます。いつ仕事が終わったかを判断するのは、もちろんI&TCオフィサーです。

サーベイランス&フォレンジックス(S&F)・オフィサー(監視及び科学捜査官)の任務は、トルーパーの求めに応じて容疑者の証拠を集めたりでっち上げたりすることです。もちろんトルーパーに対する証拠を集めたりでっち上げたりすることもできます。S&Fオフィサーには、科学捜査用(フォレンジック)清掃(スクラ)ボットなどの科学装備が支給され、IntSecのアーカイブデータを利用できます。

S&Fオフィサーは忠誠指数に責任を負います。忠誠指数は人民がIntSecを心から支持する程度を意味しており、恐怖による隷従を示す従順指数とは反対のものです。指数はトルーパーが人民の支持を得ると上昇し、人民がIntSecを恐れると低下します。問題は逮捕や処刑が忠誠指数を低下させるということです。でも、逮捕や処刑される反逆者が多いってのは、人民が忠誠でないってことですから、仕方ありませんよね。

S&Fオフィサーはチームワーク増強器(エンハンサー)として、監視チップを使用できます。このチップを使うと、チップを挿入されたトルーパー(もちろん、それが誰だか知っているのはS&Fオフィサーだけです)の視点でものを見、話を聞くことができます。なかなか便利ですが、二つ問題があります。一つは、監視チップを使用中のS&Fオフィサーは、自分の知覚をまったく使用できないということです。もう一つは、チップを使いすぎると、いちいちS&Fオフィサーに秘密会話で説明したりメモを渡したりするのが面倒になったGMが、装置を故障させる危険があることです。

セキュリティ・オフィサー(保安担当官)の仕事は治安の維持です。特にチームメイトの反逆や腐敗の兆候の監視が重要です。この点でロイヤリティ・オフィサーに似ていますが、それに加えて外部の脅威に対しても責任を負います。セクターの治安を維持するために、チームメイトを反逆者の脅威から守らねばならず、リード・トルーパーと並んで戦闘戦術について責任を負います。そのため、通常のX-317Bフルコンバットアーマーよりも遙かに強力なX-404パワーアーマーが支給されます。電源が切れない限り(そして作動不良を起こさない限り)、セキュリティ・オフィサーは最強です。この装備は外部からの脅威のみならず内部からの脅威に対しても、有効に機能するでしょう。

セキュリティ・オフィサーは治安指数に責任を負います。治安指数はそのセクターの監視レベルと逮捕ないし処刑された反逆者の数と考えることができます。厳しい監視で多くの反逆者を摘発すれば、指数は上昇します。通常の場合、指数の上昇は容易です。意地悪なGMが、逮捕と処刑の遂行割当(パフォーマンス・クォータ)の最大値を極めて低い数値に設定していないかを注意してください。

セキュリティ・オフィサーのチームワーク増強器(エンハンサー)は、大脳皮質爆弾(コーテックス・ボム)です。セキュリティ・オフィサーは、このチップ…というか爆弾をいつでも爆発させることができます。誰の頭蓋(スカル)スロットにコーテックス・ボムが挿入されているかは(あるいは誰にも挿入されていないかは)セキュリティ・オフィサーしか知りません。

デジグネイテッド・ドライバー(指定運転操縦士)は、チームの車両操縦士です。もちろん大抵の車両はボットによる自動操縦ですから、何もする必要はありません。ただし自動操縦中であっても、ドライバーは車両の運行に責任を負います。デジグネイテッド・ドライバーには、他に仕事はありません。ああ、一つありました。他の重要なSODを助け、重要なSODオフィサーの代わりに犠牲になることです。

チームの消耗品であるデジグネイテッド・ドライバーには、チームワーク増強器(エンハンサー)は与えられません。そんなもの、クズには必要ありません。

ただし、いい点もあります。責任を負うセクター指数もありません。つまり、デジグネイテッド・ドライバーには、自分をこの任務に指名したリード・トルーパーに復讐し、反逆と陰謀と裏切りをたくらむ時間がたっぷりあるわけです。

キャンペーンができます トルーパーはトラブルシューターほど死にません

【インターナルセキュリティ】と【トラブルシューターズ】の最大の違いは、ここにあるといえるかも知れません。もちろんトルーパーも死にます。しかし、強力に武装したトルーパーは、戦闘ではトラブルシューターほど簡単に死にません。危険な任務を緑の暴官(グリングーン)やトラブルシューターに押しつけることもできます。そしてクローン予算がクローンナンバーの増加を防ぎます。遺伝子浮動によるクローンの劣化はクローン・テンプレートの浄化改修によって合法的に回避出来ます(【トラブルシューターズ】25頁)。【インターナルセキュリティ】には遺伝子浮動のルールそのものがありませんから、はじめから遺伝子浮動を無視してもいいでしょう)。そして(【トラブルシューターズ】53頁の死亡ルールを適用するなら)死亡した場合にも蘇生するチャンスがあります。

反逆者として処刑されることもあるでしょうが、トルーパーの言い訳やでっち上げはトラブルシューターのちゃちな言い訳やでっち上げとは違い、ずっと強力です。アクセス属性も高く、官僚機構には様々なコネがあるでしょう。秘密結社での階級も高く、IOUも持っているでしょう。処刑を逃れるチャンスはトラブルシューターよりも遙かに高いでしょう。

トルーパー達のクローンが一回のミッションで尽きることはまずないでしょう。クローン予算をうまく使えば、1つのクローンも失わずに済むかもしれません。何回も続く、関連したミッションをおこない、PCだけでなく、毎回登場する任務担当官や、装備課や車両課の課員や、カフェテリアのマスターやウェイター、あるいは秘密結社の連絡員や秘密結社の仲間といったNPCの個性を際立たせ、NPCとの友情や対立をはぐくむこともできるでしょう。【インターナルセキュリティ】では、クラシック・スタイルでのパラノイアキャンペーンが可能です。

他のプレイスタイル

えっ? PCがばたばた死ぬ方が楽しい? ああ、それでしたらオーバーキル・スタイルでプレイしましょう。これは【トラブルシューターズ】のザップ・スタイルの武装強化版です。PCは好きなだけ錐状(コーン)ライフルをぶっ放せます。

【インターナルセキュリティ】では、基本になるクラシック・スタイルと、今説明したオーバーキル・スタイルに加えて、ホラーとハイスト(泥棒)の二つのプレイスタイルが提案されています。

ホラー・スタイルはパラノイアでクトゥルフをやる… わけではありません。「SF/ ボディ・スナッチャー(「盗まれた街」)」、「遊星からの物体X」、「ブレイン・スナッチャー/恐怖の洗脳生物(「人形つかい」)」といった、恐怖もののSF映画がモデルです。

アルファコンプレックスは、正体不明の侵略者に次第に乗っ取られていきます。まずNPCが侵略者に入れ替わります。ドラッグ漬けの赤外(インフラレッド)市民とか、気のいい車両課の作業員とか、単純な緑の暴官(グリーングーン)とか、ヒロインではないおっぱいの大きい女の子とか、PCの家族とかですね… ああ、最後の方はアルファコンプレックスにはいないかもしれません。仕方がありません、無視しましょう。そのうちに上司や本部長も侵略者に変身し、PCも1人また1人と侵略者と化していきます(変身したPCは侵略者としてプレイします)。残ったPC達は侵略者の存在を暴き、こいつらを撃退しなければなりません。あるいは侵略されたセクターから脱出しなければなりません。他のセクターが侵略されていないことを祈りましょう。

ハイスト(泥棒)・スタイルは、「黄金の7人」、「ミニミニ大作戦」、「バンク・ジョブ」、「ユージュアル・サスペクツ」、「レザボア・ドッグス」、「ロック、ストック& トゥー・スモーキング・バレルズ」、「アスファルト・ジャングル」、「現金に体を張れ」、「トプカピ」といった、泥棒達が大成功をおさめ、そして仲間割れするというストーリーがモデルになっています。

PC達は臨時のグループを結成して何かとても高価で貴重なものを盗みだそうとします。盗みの標的は何でもかまいませんが、それがあれば、藍(インディゴ)や紫(バイオレット)のクリアランスを買ったり、アンダープレックスやアウトドアや他のアルファコンプレックスで一生遊んで暮らせるほど貴重なものです。PC達は協力し、計画を立て、周到な準備をし、ハイスト(泥棒)を実行します。ええ、ハイストの実行についてはPC全員が心から協力します。パラノイアらしくない? 安心しなさい。まだ先があります。ハイストの途中では様々な問題が発生し、グループの一部がクローンを失ったりするかもしれませんが、なんと! 計画は成功します。もうけは山分けです。しかし、もうけを独り占めすれば、もっと素晴らしいでしょう(たとえばもうけは全員が藍(インディゴ)になるには充分ですが、紫(バイオレット)になるには足りません。あるいは1人だけなら他のアルファコンプレックスの紫外(ウルトラバイオレット)を買えます)。そしてIntSec内務課は秘密を嗅ぎつけ、PC達を1人ずつ尋問し、仲間を売れば、罪を見逃すだけではなく、報酬も与えようといってきます。グループの団結は保たれるでしょうか? 映画と違って、最後まで誰も裏切らなければグループの勝利です。パラノイアプレイヤーに、はたしてそんなことが可能でしょうか? とても楽しい心理実験です。

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文:高梨俊一。

CompNodes刊「私家版【インターナルセキュリティ】Q&A」より、著者許諾のもと転載。